現状と課題
存在を知ってもらうだけの
会社案内サイトだった
Web創成期ではホームページを持つ企業は今より少なく、公開しているだけで問い合わせが来ていた時代でした。インターネット上の競争が激化する昨今では、存在を知ってもらうだけの会社案内サイトは、他社との差別化や顧客の問題解決につなげることが難しく、コンバージョンにつながりにくい。クライアントもそんなサイトでした。
環境コンサルタントであるクライアントの主な依頼主は、省庁や自治体。今回のリニューアルでは、民間企業の生物多様性保全や環境CSRなどの活動に対して、もっとリーチしたいというご要望をいただきました。
そのためには、顧客視点でのコンテンツ不足がいちばんの課題でした。比較検討のテーブルにあがるためには、会社案内をこえたコンテンツが必要になります。
以下、ご要望まとめ
- 分かりくい事業内容をわかりやすく
- 省庁、自治体などの公共事業に限らず、一般企業にもリーチを広げたい
- 当社らしい表現やデザインをしてほしい
- リクルートの活性化
クライアントの場合は、従来からユニークなカレンダーやニュースレターなど定期的な提供を行っていたため、情報のバックボーンに関しては心配していませんでした。
戦略・企画
顧客視点からコンテンツを考える
マーケティングの成功はリサーチで決まる。と言われるぐらいリサーチは大切です。
リサーチには主に3つの点があります。①商品・サービスについて知る。②市場(見込み客)について知る。③商品・サービスのライフサイクルについて知る。
①と③は割愛し、②に重点を置いて説明します。
お客さまは誰?どんな問題を抱えてるの?
市場というのはつまり「誰に?」のこと。 クライアントにとって反応してもらいたい相手は「誰」なのか。理想とする顧客は「誰」なのか。 それを明確にすることは、極めて重要です。
クライアントのご要望で注目するべきは「一般企業にもリーチしたい」という点。「誰に?」が含まれていますね。これは他の要望と比べ、サイトコンテンツの核となっていく部分です。なぜならターゲットの方向性が示されており、彼らにリーチすることで問い合わせや取引につながるからです。
この段階でのターゲット設定は「一般企業」と漠然としています。クライアントのサービスにマッチする企業が、具体的にどんな企業なのか、どんな問題を抱えているのかを把握する必要があります。そうすることで、企業の解決策やヒントをWebサイトで提示できるからです。
導き出したターゲットは以下になります。(概要のみ)
- 自社の事業地や土地の環境利用を考えている中企業
- 大企業はWeb検索するとは思えないので、大企業でも各グループ子会社や支店で、裁決権と独自予算を持つ会社
- CSR活動における個別部署がなく、兼任体制で活動している中企業(総務部が担当することが多い)
- 屋上緑化やビオトープづくりなど有効にスペースを活用したいと考える企業
など。
想定される企業の課題(概要一部)
- 企業全体に環境活動への認識が乏しい。
- そもそも環境CSR活動が何なのかの理解がない。
- 環境活動の成果は具体的な数字で計測しにくく、社内の理解がとれにくい。(どれだけ儲かるの?という分かりやすい指標がない)
- その理解を浸透させるのに困っている部署・課は兼任が多く、集中的な活動がしにくい。
- 環境活動は全社的な取り組みのため、経営者やステークホルダーへの理解を得るにはどうしたらいいか?
- 社内理解が得られたとしても、柔軟な予算はあるのか?小さな活動からできないか?
など。
ターゲットとその課題を見つければ、それだけ具体的なメッセージを発せます。ここが曖昧だと、誰の何のためのサービスなのかが見えにくくなります。
_クライアントからいただいた大量の資料
見込み客の知りたいことは何?から出発すればいい
ターゲットの明確化によって抱えている課題や問題を把握することができたので、解決できるヒントを与えてあげれば、そこにプラスの感情が生まれるはずです。
そのメインとなるコンテンツが「環境CSRの問題解決」です。
見込み客の頭の中の「?マーク」を出発にし、「こんな問題ありませんか?」→「こんな感じで解決してきましょうよ」の流れで情報提供しています。一方的に「こんなことできます」と独りよがりにアピールするのでなく、見込み客の心に寄りそってから解決の糸口を提示しているのがポイントです。
「すべてのビジネスは問題解決だ」と言われるように、ターゲットの問題・課題・知りたいことを認識できれば、その答えを用意してあげるだけで喜んでくれます。その問題がすぐに解決できれば、もっと喜んでくれて信頼につながります。成果
クライアントの予想を裏切る結果に
下部の「クライアントの声」でおっしゃられるように、ご依頼当初はホームページにそれほど期待されていなかったと伺えます。
成果としては予想を裏切り、、、
リニューアル初年度、約20件の業務相談を受け、内数件を受注。
そして、会社説明会の参加学生数が例年の2倍(120名)になり、全国55大学におよびました。
リニューアルというと、どうしても最初からデザインの話に行きがちです。見た目の変更は分かりやすいですし、新鮮味があります。でも、それは服を着替えたにすぎません。もちろんイメージが変わるのでプラスに働くことは大いにあります(実際にデザインの貢献度も高い)が、中身が同じだと根本的な解決になりません。
重要なのは、、、
- 他社には提供できない自社の強みから生まれるサービスが、
- どんなお客さまにとって価値があり、
- その人にどんな内容を提供すれば気持ちが動いてもらえるのか
を考えることです。それがホームページの成約につながる重要なベースになります。
今回制作をいっしょにさせていただき、クライアントのホームページに対する考え方が大きく変わられたかと思います。
制作過程でこちらがお願いする宿題や注文を、本業の傍ら時間をつくり、考え、集め、話し合い、苦しみながら対応していただきました。担当の中山様・岡崎様・釣谷様にはたいへんご苦労をおかけしたと思います。