問題点の把握
差別化で一番やってはいけないことを
していた既存サイト
以前のネットショップでは、他店ではあまり手の入らないちょっとマニアックな清掃用品のみを取り扱っていました。商品の特化、他店の違いを打ち出すのは差別化の有効的な方法です。なんでも揃ってるショップより、狭く深くターゲットに訴求できます。このセオリーは正しい。でも、それが完全に裏目に出ていました。
失敗の大きな原因は「そもそもマニアックな商品を買う客がいない」。つまり需要がない、これに尽きます。どんなに商品を絞っても、欲しい人がいないと売れません。中には、そのマニアック性がドンピシャに刺さるお客さまもいたようですが、パイが少なすぎるため、売上げ向上にはつながりません。
他の問題は運用体制です。ショップ運営の専属のスタッフがいませんでした。これまで営業職の1人が、本業の片手間に更新を行っていたようです。片手間でできるネットショップは、片手間の結果にしかなりません。本格的に運用していくのであれば、専属を最低でも2人は欲しいところです。
戦略・企画
清掃用品の総合ネットショップにシフトする
さまざまな要素を考慮した結果、総合ショップにすることを決めました。分析内容の一部は以下のようになります。
自社の強み
クライアントは清掃業界ではそこそこ名の知れたメーカー直の商社です。大手施設や大型ビルなど、ゼネコン系ビル管理会社との取引が多くあり、大口で仕入れできる強みがあります。それは価格の安さに反映されます。メーカーとの直取引のない競合ショップの中には、このクライアントから仕入れているケースもあるため、価格では優位性があるわけです。
一般的に「価格」で勝負できるのはリーディングカンパニーだけです。価格勝負は消耗戦になるため、なるべく安く仕入れできる会社が優位になります。クライアントはその点をクリアしていますが、トップ企業ではありません。安易に決定するのには危険です。
他にも強みとなりえる要素はいくつかあったので、それを考慮しながら進めていきました。
その他の強み候補
- 営業スタッフ全員が清掃実務経験者であり、商品に精通しているため、適切なアドバイスができる
- メーカーとの密なコミュニケーションができるため、専門的な情報を迅速にフィードバックできる
- 自社倉庫に常時5,000品目以上の在庫があるので、在庫品はスピーディに発送可能
- 自店以外で購入した清掃マシンの修理ができる。パーツ販売も可能
など。
業界でのネットショップの進出状況
業界のWebでの競争状況を把握する必要があります。それが分かると、初期段階でどのレベルからスタートすべきか見えてきます。ネットショップは初めから理想の状態になることはありません。業界の状況によっては、いくつかのフェーズを設定して、徐々にステージアップを行っていく方法もあります。
清掃用品の販売においてはWebでの競争は加熱しておらず、業界の問題でもあるIT化の遅れが顕著に出ていました。ただ、いくつかの競合はすでに実績を上げており、これらを直接的なライバルと判断しました。
その後の分析(これ以降の具体的な記述は割愛します)
- ・競合4社の調査
- ・具体性のあるターゲット設定
- ・ターゲット心理の把握
などをひとつひとつ検証していきながら、方向性を固めていきました。
※補足
今回は「自社の強み」から説明していますが、強みやターゲット、競合などは相対的なものです。ターゲットが変われば強みが変わる、強みが変われば競合も変わります。どれか1要素(例えば強み)を軸に、他の要素をくるくると回しながら考えていくので、実際は決まった順番はありません。
制作・開発
レイアウトは見やすさ、システムは拡張性を重視
ネットショップの重要な要素である「見やすさ、見つけやすさ」
特にこの点に注力しました。企画時に設定したターゲットはプロの清掃業者でした。サイトに来て何か探すよりも、目的の商品を見つけに来ることを前提としています。
まず取り組んだのは、商品のカテゴライズ。多岐にわたる商品群をどうターゲットの頭の中と一致させるかを考えました。知り合いの清掃業者に相談したのと、私自身が清掃経験者でカテゴリー名には馴染みがあったので、顧客目線でカテゴライズすることができました。
カテゴライズで他のポイントになったのが競合店です。今回のネットショップはほぼ新規参入に近いため、必然と既存店の顧客を奪うことになります。奪った顧客は過去のショップに慣れています。なので、ある程度競合と同じカテゴリーで設定するほうが賢明だと判断しました。
他には、大カテゴリー、小カテゴリー、メーカーを掛けあわせた検索、ナビゲーションの最適化、カテゴリー毎のランキングなど、ターゲットの心理にそったレイアウトと機能を決定しました。
拡張性を考慮して、カートシステムはオープンソースを採用
以前はASPのカートシステムをレンタルしていました。今回のリニューアルでは今後の機能向上を考え、拡張性のあるオープンソース(EC-CUBE)を採用。上記の検索機能の充実やカテゴリー毎のランキング、領収書発行の選択、B2B決済の導入、購入金額によって目玉商品が100円で買える機能など、一般のASPでは拡張できない機能を盛り込みました。
集客・運用
広告に頼らない運用と独自コンテンツの提供
スタートアップは商品の充実に集中
総合ショップとしてリニューアルしたからには、まずは商品が充実しなくてはいけません。当初の問題だった運用体制を整える必要がありました。
しかし、人的リソースの充足は、商品登録を行う専用スタッフ1人に留まりました。ブルーチップでも登録作業をお手伝いし、半年かけて登録を行いました。その時点ですでに目標額を大きく上回る売上げ結果に。理由はいくつか挙げられます。
- ・そもそも競合が少ない
- ・価格の優位性がある
- ・商品名や商品カテゴリーをピンポイントで検索するので、内部SEOをしっかりしていれば自然検索でヒットする
など
リソース不足のためブログができない。ではどうしたか?
ネットショップは商品だけ掲載していてもすぐに限界がきます。見込み客に役に立つコンテンツづくり(メディア化)が求められます。当初はブログ運用を提案しましたが、リソース不足のため実現できません。
そこで、お問い合わせフォームからいただいた質問と返信内容を「Yahoo!知恵袋」や「教えてgoo」のようにアーカイブ化して掲載しました。これにより当初想定していなかった個人客にも、リーチするようになりました。
粗利が低いと広告はムリ?
有効な集客方法でまず挙がるのが、リスティング広告。ただ清掃用品は粗利が低いため、広告を掲載してもペイできません。LTV(顧客の生涯価値)を考えるとプラス転換するのは理解していましたが、当初はリソース不足のためリピートを生み出すための施策が行えませんでした。
その後の集客・運用
(それ以降の具体的な記述は割愛します)